朝になりました。小雨がぱらつきそうな曇り空で、何やら意気消沈。5時半からの朝食を済ませ、6時過ぎ。男性お二人は雲取山へ向けて出発して行き、男女3人組さんは新地平へ下山準備。さて私はどうしよう。あれこれ迷っていたけれど、雲が少し明るくなったような気がしてきたので、やはり雲取山へ向かうことにしました。
奥秩父。しっとり天気が似合うと言いながら、空が暗いと気力が萎える情けない軟弱者。それでもチラッと青空の気配が見えれば、たちまち元気になれる自分はまさにお天気屋。こんなじゃ将来、とても山の会などには入れないなあ~と思いながら出発しました。昨日通った雁峠分岐から雲に霞む笠取山方面をチラッと眺めて、右の唐松尾山方面へ。 |
【水場道分岐】 |
空は次第に明るくなり、一時薄日も差して来て、よかったよかった。白沢峠へ向かっていたら、引き返したくなっているところでした。
うっすら色づいた木々を見上げつつ進んで行くと、水場道分岐近くにベンチがありました。雨の心配はなくなったので、ザックカバーはしまいます。 |
そのすぐ先に「水干」がありました。標柱には「多摩川の源頭 東京湾まで138km」と記されています。
多摩川の最初の一滴は?と覗いてみましたが、滴り落ちてくる気配はなく、ちょっと残念。ダイモンジソウが咲いていました。 |
【水干】 |
【黒槐山の東】 |
少し先でシラベ尾根と笠取山頂分岐を見送って、山腹道を進んで行きます。両側は笹に覆われていますが、道は幅広に刈られているので歩きやすい。
緩やかな登りになって、尾根の上に出ました。黒槐の頭あたりでしょうか。木々の間から富士山が見えて、びっくり。今日は曇りで富士山は見えないと諦めていたので嬉しくなりました。
細かなアップダウンの先に、文字の消えた道標がありました。苔むした倒木ベンチがあるので、ここで休憩。誰も通らず、とても静か。時々遠慮がちに小鳥が囀っています。
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シャクナゲの木が多くなったり、イワカガミの葉を見たり、小さな岩場があったりの尾根道が続き、ここで初めて向こうから来た4人グループとすれ違いました。連休でも、この稜線はとても静かです。細かなアップダウンを繰り返して進んで行くと、唐松尾山らしいピークも大分近づいてきました。オブジェのような枯れ大木があります。 |
【唐松尾山へ】 |
【オブジェのような枯れ木】 |
露岩混じりの箇所になると見晴しが良くなり、曇り空ながら遠くに青空も見え富士山や大菩薩嶺の山並みが見えます。今日は白沢峠へ下山しなくて、本当によかった!
【大菩薩嶺と富士山】 |
シャクナゲの木が多くなり、岩混じりの急坂を登りきった所が唐松尾山の山頂でした。三角点は北へちょっと奥まったところにあります。傍らの木には奥多摩で見かけるあの木彫りの山名札がかかっていました。これを見ると何やらホッとします。いつまでもなくならないで欲しい。
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【唐松尾山 三角点は奥】 |
【 木彫りの山名札 「唐松尾山」 】 |
緩やかな下りになり、東へ行くほど広葉樹が多くなってくる気がします。ほんのり色づいて、もっと秋が深まればこの辺りもきれいそう。 |
【奥秩父縦走路】 |
進んで行くと、道端に白衣(びゃくえ)の男性が座っていました。傍らには菅笠と杖がおかれています。「こんにちは~」と言ったあと、躊躇しつつも「どちらからいらしたのですか?」と、お聞きすると「三峰から甲武信ヶ岳の方へ向かう途中です。」とのこと。「昨夜はどちらの小屋へ泊まられたのですか?」と伺えば、「どこにも泊まりません。修行ですから夜も歩きます。」とのお返事。びっくりして「じゃあ眠らず夜通し歩かれるのですか?」と聞けば「こうして時々岩にもたれて休みます」とのこと。
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【白衣の修行者】 |
私は感激して、「写真を撮らせて頂いてもよろしいでしょうか?」と伺うと、菅笠を被って下さいました。
足元を見れば地下足袋ではなく白足袋。腰には大きな薄紅色のほら貝があって、持ち物はナップザックほどの小さな白い袋。食料があまり入っている様子もなく、雨が降ったらどうするんだろう・・・などと心配してしまいましたが、余計な事は聞けません。 |
指のササクレを消毒されていたので、「絆創膏、持ってます!」と言って、張り切って差し出そうとすると、「いいです。修行ですので・・・」とのお返事。時間にして2,3分の会話で、もっと色々伺いたかったけれど、お邪魔しては申し訳ないので御礼を言って通らせていただきました。平日ではなく連休に修行行脚。在家の方なのだろうけど何やら有り難い方にお会いしたな~と、とても厳粛な気持ちになり、先へ進みました。
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途中にあった、眺めが良いと記されている西御殿岩への分岐には小さな手作りの道標があり、踏み跡は細い。今日は展望もなさそうなのでパスです。
東沢でしょうか、崩れた大きな沢をちょっと高巻いて更に下ると、山ノ神土に着きました。 さっきお会いした修行の方は山の神様のお遣い? ちょっとタイムリーな地名で、忘れられない場所になりそうです。和名倉山や笠取小屋への巻き道が分岐していました。
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【山ノ神土】 |
両側はまた熊笹が多くなり、幅広の道になりました。うっすら色づく木々を見つつ進んで行くと、古い道標があって牛王院下分岐。その先には明るい防火帯の草地が広がっていました。この辺りを牛王院平というのでしょうか。青空も見えて来て、日差しもあって、この辺りも気持ちのいい場所です。 |
【牛王院平へ】 |
【牛王院平?】 |
【将監峠】 |
熊笹の茂る林を抜けると、大きく開けた草原に出ました。ここが将監峠。
明るく広く気持ちのいい草地で、弱いながら日差しも降り注いでいます。誰もいないので大の字になり、見上げる北の空は青い。ここはずっと昼寝でもしていたいような草原でした。それにしても、静か。
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将監峠からも緩やかな道が続きます。笹の刈られた道を進み、将監小屋への分岐を過ぎると、あとはずっと高低差の少ない竜喰山と大常木山の巻き道。まだ紅葉には早いけど、所々色づいた木々がアクセントのように立っています。桟橋やら石積みやら、よく整備された歩きやすい道が長く続きました。 |
【巻き道縦走路】 |
【桟橋 石積み】 |
支尾根を何度も越えて行き、飛竜山が随分近づいて来ました。山頂はガスに煙っています。 |
【ガスに煙る飛竜山】 |
ひたすら歩いて行くと、前方に一人佇んでいる人がいる。昨日笠取小屋にテント泊していた若い単独女性で、この方も瑞牆山荘からの縦走らしく、ちょっと少年っぽい素敵な女性です。「もう歩くのがイヤになりました~」とのこと。「ほんと、この道、長いですよね~ でもそろそろハゲ岩で明るい岩場だからお昼に丁度いいですよ。」と応えましたが、テント装備の重そうなザックで、長く単調な巻き道は確かにイヤになるかも。 |
【奥秩父縦走路】 |
そろそろと思いつつも、まだまだ続く縦走路。ポツポツ見られる淡い紅葉がきれいです。
イワカガミの葉が多くなり、岩っぽくなってきたので、そろそろハゲ岩のはずです。 |
ようやくハゲ岩分岐に到着。ルートは左ですが右へ少し行けば展望のいい岩場があります。
が、今日は残念、真っ白です。このハゲ岩からの眺めは素晴らしく、南から北西にかけての大展望。奥秩父の山々もよく見渡せた記憶があり、ここは楽しみな岩場でした。
間もなく到着したさっきの単独女性とおしゃべりしながらの昼食タイム。この後は三条の湯へ下る予定だそうです。
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【ハゲ岩分岐】 |
【飛竜山頂分岐】 |
昼食後、分岐に戻り少し行けば飛竜権現で、小さな祠が祀ってあります。
山腹の縦走路へ行きかけましたが、飛竜山の山頂から北天ノタルへの尾根伝いの道があるかどうか気になっていたのを思い出したので、やはり山頂へ行ってみることにします。 |
シャクナゲの木が続く樹林の奥に飛竜山の山頂がありますが、周囲は少し伐採されたのか、以前より明るくなったような気がしました。 |
【飛竜山】 |
山頂から北東へ延びる踏み跡はだんだん薄くなって、ヤブやら倒木やらになりました。ちょっと方向が違ったかも、と右寄りへ移ると小笹に埋もれた踏み跡を見つけ、こちらが正しい雰囲気。でもガスが深くなってきたし尾根の先にはアップダウンもありそうなので、右下に見える縦走路へ下りました。
この先は桟橋が続き、やがて北天ノコルの道標。三条の湯への道が下りています。
緩やかな登りになって、三ツ山の東あたりの支尾根カーブ地点でしばし休憩。以前見た時と同じ場所に、イワカガミの葉が少し残っていました。三ツ山から下った先も桟橋が多く、すっかりガスってしまった中をひたすら歩く。 |
【北天ノコル】 |
【桟橋が続く】 |
【狼平】 |
緩やかな笹の刈り払い道になって、やがて狼平に出ました。広い草地で、晴れていれば気持ちのいい休憩適所。
今日はガスっていますが、ここでティータイムを予定していたので、またも休憩。ここまで下ると紅葉にはまだ早く、周辺は緑一色です。 |
今日すれ違ったのは唐松尾山手前の4人組と白い修行の方だけ。連休なのに、相変わらず静かな道が続きます。
三条ダルミに着きました。ここも東側が開けて見晴らしのいい場所ですが、今日は何も見えません。
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【三条ダルミ】 |
すぐ先で雲取山の巻き道分岐に出ました。今日はもう山頂へは行かずに巻いて雲取山荘へ向かいます。道は緩やかで勾配はないものの、雲取山の西側は急傾斜なので崩れやすいのでしょう、ちょっと荒れています。桟橋は苔むした古い物ばかりで、体格のいい男性がデカザックを背負い100キロくらいになれば、ちょっと躊躇しそうな崩れたかけた桟橋もありました。
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【雲取山 西側の巻き道へ】 |
【古い桟橋】 |
【雲取山荘】 |
山肌に沿った長い道が続き、ようやく雲取山荘が見えて来ましたが、山荘手前はネットが張られ通り抜け出来ないようになっています。少し戻ってレリーフの所から抜けましたが、巻き道は荒れているのでなるべく通らないように、ということのようです。
宿泊手続きを済ませ、ひと休み。 山荘前のベンチには、笠取小屋で一緒だったお二人がいらしたので、またもやコーヒーを頂きながらお話に加えさせていただきました。
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連休最終前夜。今日の雲取山荘は空いていて50人くらいでしょうか、8畳に2人組と単独2人の計4人。食後は炬燵でゆったりしながら、最近の山の会事情など伺いました。 |