前飛竜

まえひりゅう(1954m)
平成23年6月18日~19日

一昨年秋の奥秩父で、シャクナゲが多くて心に残った笠取山から唐松尾山へ行って来ました。
前飛竜から飛龍山の山頂にかけてもシャクナゲが多いので、今回は丹波から入山します。


2011.6.18
(土)
 丹波サオラ峠熊倉山分岐露岩前飛竜飛龍権現将監小屋分岐将監小屋
曇り
一時小雨
 10:25着
 10:30発
12:20
12:30
13:10
13:15
14:20
14:35
14:4015:2017:0517:15着



今年はシロヤシオなどツツジ類もきれいでしたが、アズマシャクナゲの花付きもいいらしい。黒槐山から唐松尾山は日帰りでは到底行けない山域なので、将監小屋泊での山行です。 奥多摩駅発丹波行きの始発バスは9:30で、かなり遅い。通常、山小屋には遅くても4時頃までに到着するのがマナーだと思いますが仕方ありません。将監小屋には5時過ぎるかも知れませんと予約を入れておきました。

朝の奥多摩駅は霧雨模様。「日曜日は曇り一時晴れ」の予報が直前で悪くなってしまいましたが、こんな天気でも登山者はびっくりするほど多く、バス会社も慌てて鴨沢行き臨時便の準備を始めました。終点の丹波は霧雨もなくほっと安心。バス停にはトイレがあります。今日はいつ雨が降ってきてもおかしくない天気なのでスパッツとザックカバーは予め着けて出発しました。

10年ほど前の6月に飛龍山から丹波に下りてきたことがあります。その時の記憶では畑を抜けると短い舗装道路ですぐバス停だったと思いますが、今は舗装道路をけっこう折り返しながら登って行くので、ちょっと心配になってきました。地図にもくねくね舗装道路はないけど、大丈夫?


サオラ峠入口
【サオラ峠入口 右へ】
タイヤの落石防止壁
【鹿柵とタイヤの落石防止壁】

振り返ると単独男性も上がってきたので安心。舗装道路の先で鹿柵を開閉して奥に進むと見覚えのある畑の雰囲気になってきました。

更に鹿柵開閉して進めば、これも印象に残っていたタイヤの落石防止壁が見えてきました。


植林から支尾根に上がり、今にも降りそうで降らないガスの中、
大きくトラバースしながら、落ち葉いっぱいの道を登って行きます。
風がなく暑い。雨に濡れると思って団扇を持って来なかったのが悔やまれる。
しっとり緑いっぱいの中に、エゴノキの白い散り花や、ヤマツツジの赤い散り花。
上の方は風が出てきましたが、今度はジグザグ急登が続いてシンドイ登りです。


エゴノキ
【エゴノキ散り花】

ヤマツツジ
【ヤマツツジ散り花】

何やら疲れてペースダウン、ようやくサオラ峠に着きました。 先ほどの単独男性と若い3人組が昼食中。今日はバスの中でおにぎり1個を食べておいたので私は休憩だけで先へ進みます。


サオラ峠
【サオラ峠】
1477m?
【1477m?】

霧に包まれた静かな道で、今までと違って緩やかな尾根道です。ミズナラの緑がきれい。木々を見上げながら進んで行きました。

道は分かりやすい一本道。


深い山の中、何も考えず、何も探さず、無になって歩いていると、山のささやくような想いに包まれることがあります。

誰か来て、人の気配がすると、
すーっと何処かへ行ってしまう。

山に浸り、山と二人きりになれる、この不思議な感覚を味わってしまうと、「一人歩きは危険なのでやめましょう。」と言われてもなかなかやめられないのです。

熊倉山へ
【霧の中を熊倉山へ】

熊倉山
【熊倉山 山頂】

熊倉山に到着しました。
ガスの中にあの木彫りの山名札が見えています。樹林の中の狭いピークで、しばし休憩。

この先から所々枯れたスズタケが出てきましたがずっと広葉樹林が続きます。霧に包まれた林の中をただひたすら黙々と歩んで行きました。


やがて岩っぽい雰囲気になり、ご丁寧に小雨が降ってきました。傘を差して進みます。
前飛竜の露岩の急登になりましたが、暑いので雨具は着けず、傘差して一歩一歩。
前飛竜の道標が現われましたがここはまだミサカ尾根の途中。地図の前飛竜はもう少し先です。


前飛竜へ
【岩っぽくなる】

前飛竜の道標
【「前飛竜」の道標だが・・・】

分岐の露岩ピーク
【岩岳尾根分岐の露岩ピーク】

すぐ先の露岩ピークは岩岳尾根分岐で見晴らしのいい岩場ですが、今日は真っ白。

小雨はほぼ止んだので、ここで残りおにぎり1個のお昼。今日は時間がないので、いつものようなゆったりランチタイムはなしです。

隣に見えている次の露岩ピークが前飛竜(1954m)だと思います。

前飛竜から飛龍山まではシャクナゲがきれいな所。日当たりのいい尾根上の花は色褪せていましたが、両側の斜面はまだきれいです。

トウゴクミツバツツジはきれいに咲いていて足元にコイワカガミもちらほら咲いていました。

シャクナゲ咲く道
【シャクナゲ咲く道】

トウゴクミツバツツジ
【トウゴクミツバツツジ】

コイワカガミ
【コイワカガミ】

シャクナゲ終盤
【日当たりのいいシャクナゲは終盤】

ちょっと下った群生地は、さすがに遅すぎ。
散り花もあって、ほぼ終わっていました。

今日はなかなかペースが上がらず、ずっとハーハー言いながら、予定よりかなりタイムオーバーして山頂分岐の飛龍権現に着きました。右上に小さな祠が祀ってあります。

飛龍権現
【飛龍権現】

この飛龍権現から飛竜山山頂にかけてはアズマシャクナゲが群生し、標高も上がるので花はまだきれいと思われますが、将監小屋に「5時過ぎるかも」と予約してあるとはいえ、もう3:20。どう考えても写真撮りつつピストンする時間はない。ここからが今日のメインだったのに仕方ありません。山頂のシャクナゲは諦めて西へ向かうことにしました。


シャクナゲ道
【西側はシャクナゲもきれい】

『はぁ~・・・  何のために飛竜経由にしたの?』と、情けなくなってトボトボ下り始めると、意外にもこちらの花はまだきれいに咲き残っていてくれました。よかった~

ハゲ岩の展望はないと思いつつ、分岐からちょっと寄ってみましたが、こちらは日当たりもいいので既に色褪せていました。


縦走路はすっかり終わっている株から蕾を持つ株まで色々。山頂ピストンは出来なかったけど、きれいに咲いているシャクナゲの写真を撮りつつ進んで行きます。


アズマシャクナゲ
【ちょっと鮮やかなアズマシャクナゲ】

アズマシャクナゲ
【アズマシャクナゲ咲く道】

優しいピンクが雨に濡れて、
しっとり透けるようなシャクナゲです。


アズマシャクナゲ
【アズマシャクナゲ】

古い倒木の根元には、鮮やかな苔に混じって
コイワカガミが群生し、素敵なオブジェになっていました。
苔むす緑の中に、白いオサバグサも点々と咲いています。
小さな白花を下げて咲くオサバグサは、緑の葉もおしゃれ。


コイワカガミ
【コイワカガミ】

オサバグサ
【オサバグサ】

笹の道
【笹の道】

やがてシャクナゲもなくなり、足元の花も少なくなって、飛竜山の大ダルから左へ巻き道の水平道になりました。この先は長いです。

ずっと平坦な道が延々と続きます。

ミツバツツジが散っている。
時々小雨になる。
水滴の付いた熊笹がズボンを濡らし始める。

将監小屋分岐はまだかな~   
って、まだ1時間か。
この道、長いんだ。 
分かっていたけど、長いです。

トウゴクミツバツツジ散る道
【トウゴクミツバツツジ散る道】

しかし、早く来ないかな、小屋分岐。   あの枝尾根の先かな?       違うか~  
緑がきれい。    ツクバネウツギが咲いている。   ズボンがすっかり濡れてしまった。


若葉
【若葉道】

ツクバネウツギ
【ツクバネウツギ】

苔の道
【苔の道】

苔むした道って、いいなあ~
雨具、ズボンだけでも着ければよかったなぁ・・・

しかし、早く来ないかな、小屋分岐。
あの先かな? 

違った・・・

何度も何度も細かな枝尾根を回りこんで、
期待するのも疲れた頃、
ありました!ありました!将監小屋分岐道標!

よかった、よかった。
ようやく左へ下ります。

将監小屋分岐
【将監小屋分岐道標】
将監小屋
【将監小屋】

すぐかと思ったけど、やはり2度ほど細かな枝尾根を越えて、ようやく小屋の青い屋根が見えて来ました。煙突から立ち昇る青白い煙が、なんとも嬉しい。


5時13分着。入口で声を掛けると、年配の小屋主さんがすーっと出てきました。「遅くなってすみません。」と言っても反応なく、殆ど意に介さない雰囲気。よかった~  隣の大部屋へ行くと今日の宿泊者は、なんと単独女性一人だけ。私が到着したので、その方も「よかった~」とニッコリ。シャクナゲの時期なのでもっと居るかと思っていましたが、私も一人きりじゃなくて「よかった~」です。

この単独女性は私よりやや年上の様子で、松本からのマイカー登山者でした。今週末で高速料金1000円が終わるらしく遠出して来たとのこと。百名山はずいぶん前に終了し、現在は二百名山目標で明日は和名倉山ピストンというベテランさんでした。

宿泊場所は大部屋一つですが、広くて50人は余裕で泊まれそう。大きな薪ストーブを景気良く焚いて下さったので、着替えた服やスパッツなどすぐ乾いて助かりました。

テント場は、すぐ横の防火帯を段々に整備した草地。水場の水は豊富に流れ、クリンソウが咲いていました。


クリンソウ
【水場に咲くクリンソウ】

シャクナゲ見頃だった先週は何組か予約もあったそうですが、天気予報が悪かったので全てキャンセル。誰も来なかったとのこと。小屋主さんは一人でこの山小屋を50年以上守っていて、昭和30年代が一番賑わったそうです。林道がどんどん出来てマイカー登山が普及し、一時14,5軒あった下の民宿も、今はすっかり廃れてしまったと話されていました。 この小屋もこの方がいなくなれば(って、申し訳ないけど)廃屋になってしまうのでしょうか。気の毒なような寂しいような、そして小屋頼みの登山者には心配なお話でした。

雲に覆われているとはいえ夕暮れの空は思いのほか明るく、夕食後は外のベンチで7時過ぎまで三人でおしゃべりしていました。明日の雨は大丈夫そうです。



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