宝尾根・大山三峰山

おおやまみつみねさん(934m)


大山三峰山南峰のすぐ南にある山を七沢山、北東へ伸びる尾根を宝尾根と呼ぶそうです。
破線もないルートですが、広い尾根やヤセ尾根岩稜など変化に富んだ尾根と記されています。
三峰山北部の鍋嵐山も以前から気になっていたので、ピストンしようと思ったのですが・・・


2010.11.20
(土)
 煤ヶ谷「清川
宝の山」
512m点777m点
付近
七沢山大山
三峰山
水ノ尻沢
ノ頭
鍋嵐山
分岐の祠
鍋嵐山
直下
物見峠煤ヶ谷
晴れ
のち曇り
 07:30着
 07:30発
08:00
08:10
09:05
09:10
09:55
10:05
10:45
10:50
11:05
11:30
12:40
12:45
13:1013:40
14:00
14:30
14:40
15:45着
16:04発



宝尾根は松浦著「バリエーションルートを楽しむ」では「七沢山東尾根」で紹介されていますが、s-okさんなど丹沢に親しむ方達の間では「宝尾根」と称されているようなので、私もわかりやすく宝尾根と呼ぶことにしました。

本厚木駅6:55発の宮ヶ瀬行きバスはガラガラ。登山者も僅かで、煤ヶ谷で下車したのは私と単独男性だけでした。バス停から左へ谷太郎林道を進むと、すぐ三峰山への道が右上へ分岐します。単独男性はそちらへ上がって行きましたが、私は今回宝尾根と呼ばれる尾根を登ってみようと思うので、そのまま林道を進みました。100m先の左側に風流な造りの公衆トイレがあります。やがて左に清川リバーランドを見て、更に進むと今度は右側にまた同じような造りのトイレがありました。


権現橋
【鳥屋待沢にかかる権現橋】

植林の中を進み、鳥屋待沢にかかる橋を渡ります。以前、鳥屋待沢奥の尾根に権現様が祀られていたので権現橋と呼ばれているようです。

手前に「クマ注意」の看板があり、今年はあちこちで熊の被害を聞くので、『どうかクマに遭いませんように。無事に宝尾根を上がれますように。』と祈りつつ先へ進みました。


後日この鳥屋待沢の上流を詰めて惣久経路の尾根に乗ろうとした辺りで本当にクマに遭ったという方からメールを頂きました。「自分に向かって来たが何とか無事だった。」とのこと。軽業師のように逃げたご様子ですが、本当にすぐ近くにいるものなんだなあと、後で怖くなりました。


尾根の取り付きには「清川宝の山」の石柱があるらしいのですが、探して進むうちに末端カーブを過ぎてしまいました。

引き返して改めて探すと、ありましたありました。もっと見やすい道端にあるのかと思っていましたが、植林のちょっと奥まった所に細く立っていて、字が赤くちょっと見辛いです。

そして、見上げる尾根は急斜面。
『こんなとこ、登るの、無理!』


清川宝の山
【 植林の中に「清川宝の山」 】

堰堤のある左寄りから登りましたが、軟らかな土と落ち葉グズグズの急斜面。手を付いて登るようになり、踏み跡などない。『もっとマシな所を探そう』とそろそろと戻りました。末端右寄りに踏み跡を見かけていたので、そこまで戻って登ってみたけど、やはり急勾配になると踏み跡が消えてしまいました。また林道に下り立ち、斜面を見上げて溜息。

取り付きから敗退って聞いたことない。地図を見れば急登は最初だけのようなのでストックを取り出して再度挑戦。さっきの左寄り、カーブする辺りから慎重に一歩一歩登って行きました。


宝尾根
【雑木と植林】

急勾配は本当に最初だけで、その後は普通の急登になりほっとしました。

しばらくして末端高みで一段落。後は緩やかな道になり、左が雑木林、右が植林になりました。やや色づいたかなという雑木林からは左手に鐘ヶ岳が見えていました。

短い急登で小ピークに上がりました。向こうに華厳山方面が見えています。

やがて、また植林の急登になりました。

華厳山方面
【植林ピークから華厳山方面見える】
512m点の下
【512m点の下あたり】

だんだん西隣の尾根が近づいて来ると、あちら方面は自然林のよう。足が自然に左寄りになり、隣尾根との撓みのような場所が見えて来たのでちょっと寄ってみます。

ゆったり広い林で、いい感じの場所でした。隣の尾根は谷太郎橋辺りから伸びている尾根のようですが、512m点への登りはやや勾配がありそうなので、また植林に戻りました。

植林急登が終わると尾根が広がり、明るい自然林になりモミの大木もあります。「水源の森林」の赤帽白柱「K20」があり、この辺が512m点のようでした。

宝尾根 512m点あたり
【宝尾根 512m点あたり】
モミ大木多い
【モミ大木多い】

この先、尾根が広がって、モミの大木があちこちに見られます。中に一本すっと高い檜の大木もありました。落ち葉いっぱいの斜面になって、踏み跡もないので足の向くまま登って行きます。

右側の鹿柵が近づき、やがて枯れた笹が多くなると左から来た尾根に合流しました。

振り返れば鐘ヶ岳が正面に見えていて、この尾根はマス釣り場からの尾根のようです。

尾根に合流
【マス釣り場からの尾根に合流】
750m辺り
【750m辺りは広い尾根】

尾根は更に広がり、林のようになってきました。広葉樹林なので雰囲気はいいのですが・・・何かが足りない感じです。

この先は急登続きのようなので、ここでしばし休憩タイムにしました。

この先、少し登った小ピーク。多分ここが777m点。モミが数本立つ、ただの通過点のようなピークです。

宝尾根 777m点
【宝尾根 777m点はモミ林立】
急登 ロープ
【急登 ロープ数ヶ所】

その先から尾根が痩せてきました。狭い尾根に立つ木々の間を縫って行くような所や、狭すぎてちょっと巻くような所。 両側はかなりの傾斜で落ちているので、たまにロープがあると助かります。


ザレて痩せた所は滑らないように、常緑樹に隠れた所は葉を持ち上げて足の置き場に注意しながら進んで行きました。ほっと息つく所もありますが概ね緊張の連続で、けっこう長いです。


ヤセ尾根
【ザレたヤセ尾根】

ヤセ尾根
【シキミかぶさるヤセ尾根】

七沢山
【七沢山】

ようやく少し緩んで、主稜線に上がりました。ここが七沢山というらしい。大山三峰山の一般登山道で、三峰山から南へ下るとき通過する小ピークで、山名札もないので名前があるとは知りませんでした。


ここから北へ向かいます。最初のピークは三峰山の南峰なので一旦下ってその後また登り返します。ここで今日初めて人に会い「こんにちは~」と言うと、先方の単独男性から「今日、初めて人に会いました。」と返って来ました。紅葉時期の大山三峰山は人も多いと思っていたので意外です。次の小ピークは中央峰の南側コブ。


下って登り返し、大山三峰山山頂に到着です。
山頂標柱やベンチが新しくなり、ここには人がいるだろうと思ったのに、誰もいません。紅葉時期なのに珍しい。朝は晴れていましたが雲が多くなってきて、うっすら薄日の中でお昼にしました。

しばらくして、2人組が到着。
また少しして2人組が到着。
そして私の出発と入れ違いに、また2人組が到着しました。


大山三峰山
【大山三峰山】

下って行くと更に2人組と二度すれ違いました。年代も性別もバラバラですが、今日の三峰山山頂は2人組専用みたいになっているんだろうな~と、ちょっと可笑しくなりました。大山三峰山は5回目で、煤ヶ谷から2回、土山峠から2回で逆コースは初めてです。梯子や鎖場も見え方が変わって楽しい。


三峰山 北峰
【アケビ平から振り返る三峰山 北峰】

次の北峰を過ぎると、落ち葉の急下りと段々下りになります。下り立った所がアケビ平と呼ばれるベンチのある平坦地。

ここはまたグループ専用のように3グループが休憩中。ちょうどお昼なので、狭い山頂を避けてここでランチタイムになったのでしょう、皆さん楽しそうです。

この先はほぼ平坦な道が続きます。途中の崩壊地から正面に丹沢三峰山のデコボコが見え、ピストン予定の鍋嵐山もよく見えていました。

崩壊地から見る鍋嵐山
【崩壊地から見る鍋嵐山】
分岐ベンチ
【物見峠・煤ヶ谷 分岐ベンチ】

密生していた周囲の笹はすっかり枯れ、茎だけがボサボサ茂っています。やがて煤ヶ谷分岐のベンチ。「この先急峻なので・・・」の看板が立つ分岐です。

ここのベンチも新しくなっていました。左の物見峠方面へ進みましたが、こちらはあまり歩かれない道です。

左手は植林ですが随分伐採されて明るくなっていました。この先の小ピークは、エアリア地図で「祠・テーブルあり」と間違って記されている748m点で、その「祠・テーブル」はもう少し東の高みにあります。水源森林の赤帽白柱に「水ノ尻沢ノ頭」と記されていて、小さなピークですが自然林なので、しばし休憩。

この先で急な段々を下り、物見峠に出ました。ここから鍋嵐山へピストンの予定です。

水ノ尻沢ノ頭
【748m点(水ノ尻沢ノ頭)】
鍋嵐山入口
【辺室山分岐の西が鍋嵐山入口】

物見峠から15分ほどで小さな石祠のある小ピークに着きます。辺室山への道標が立っていますが、この左、西方向が鍋嵐山への入口です。

以前はなかった「登山者の皆さま、この先登山道ではありません」神奈川県の注意札が立っているので、ちょっと気が引けるのですが・・・


こちらもヤセ尾根で、1ヶ所だけ短いロープがあり、あとは落ち葉に埋もれた細い巻き道や狭い尾根上の道です。右の沢に落ち込む斜面は紅葉がきれいです。


落ち葉の巻き道
【落ち葉の巻き道を振り返る】

ヤセ尾根
【ヤセ尾根】

沢登りの人
【ハタチガ沢から人間が上がって来た!】

鍋嵐山直下まで進み、誰もいないと思っていたのにどこからか声が聞こえてきました。見れば右の沢から3人が上がって来ています。

尾根に乗る最後の斜面は急勾配。熊でも上がれないんじゃないかと思われる落ち葉いっぱいの斜面に取り付いていました。

カモシカしか歩けないような所で、人間の歩く所じゃあない。素晴らしい姿勢、バランス感覚に見とれてしまいました。

鍋嵐山山頂はすぐ上のようなんですが、柔らかい土のグズグズ落ち葉急登。
手足が短いので上の木が掴めない。
登り方が下手なのでズルズル滑る。
へっぴり腰のオロオロ姿。

ストック出せばいいとは思いつつ・・・

鍋嵐山頂直下
【鍋嵐山頂は この上?】


頑張って登りきっても、ピストンなので下りのズルズルも心配。沢に滑り落ちてもこの方たちのように上がれる自信は100%ない。ウロウロした挙句、『今日は、もう、帰りたくなった』


紅葉
【紅葉眺めて】

沢登りの皆さんは、上がりきって靴など履き替えています。私は少し先まで戻り、倒木に腰掛けて休憩。

『鍋嵐山。山頂は展望もないらしいから、紅葉眺めてのんびりするほうがいいよね!』と自ら慰めつつ、コーヒータイムにしました。

また狭い巻道やヤセ尾根を通って、物見峠へ戻って来ました。ここは四辻。黒岩方面は崩壊のため現在は通行禁止になっています。

東側が開けていて、ベンチがあります。
バス停でぼーっと待つのもつまらないので、再度時間調整です。

物見峠
【物見峠】

ここからの巻き道は初めて歩きましたが、思いのほか素敵な道です。左手には淡い紅葉の山肌が続いていて、右奥に見えているのが辺室山でしょう。自然林のクネクネ巻き道で、いい道です。煤ヶ谷から三峰山へ行く場合はちょっと遠回りでも物見峠経由で登った方がいいと思います。


辺室山方面
【辺室山方面】

物見峠東側の巻き道
【落ち葉の巻き道】

まだ緑
【山麓は まだ緑】

巻き道が終わると植林になり少し下ると三峰山への一般道に合流、ここもベンチがあります。

この先は自然林と植林が交互に現われ、紅葉はまだこれからのようでした。

最後の植林を抜ければ煤ヶ谷の集落。
登山口にもバス停にも「ヒル注意」の看板がありました。東丹沢にもいい山が多いのに、4月~10月(最盛期:6月~9月)は要注意で、困ったものです。

煤ヶ谷
【煤ヶ谷集落】


宝尾根は、前半は植林の急登が多く、中ほどは自然林の広い尾根でゆったり、後半は緊張連続のヤセ尾根でした。手作り道標もないルートですが、僅かにテープはありました。大山三峰山は紅葉時期なので人はやはり多かったようですが、各グループがほどよい間隔だったので混雑した印象はありませんでした。鍋嵐山は・・・ また今度考えよう。晴れていたのは朝だけでしたが、寒さもなく静かな山歩きでした。



前回の蕨山    HOME    山域別    次回の矢倉岳・金時山