富士山は好きですが、遠くから眺める山で、あまり登りたい山ではありませんでした。でも日本人なので、一生に一度は登っておいたほうがいいのかな・・・それなら還暦になったら登ろうと思っていました。そこで今年は登ろう!と思っていたら、望さんも金森さんも今年富士山予定とのこと。それなら3人で行きましょうということになり、休みを合わせて行くことになりました。
さて当日。新松田駅には金森さんに聞いていた電車より一本早く着いたと思ったので、のんびり御殿場線の松田駅へ向かうと、駅前に3人。 ・・・・・? なんと、オマケの一人は奥沼津でお会いした食うかいさんでした。地元にお住まいとはいえ、電車で二駅先(ひと駅区間が長い)まで見送りに来て下さったようです。記念写真を撮って、差し入れまで頂いて、食うかいさん、早朝から本当にありがとうございました。行ってきま~す。
御殿場駅9:10発の須走口行きバスに乗って、約1時間(片道1500円・往復2000円)。13~15日はマイカー規制で道路はスイスイでしたが、五合目近くなると駐車場からあふれた昨日以前の車が片側にずらっと並んでいました。 |
【須走口 五合目】 |
須走口で下りると、なんとお土産屋さんがずらっと並んで、人いっぱい。さすが、観光地。
そしてここでもまた一人、あのポーズのお方。望さんと同じ「富士山命」ダマチョさんです。 4人並んで例のダマポーズで出発式を終え、差し入れのお菓子やドリンクを頂いてパワー充電。
こんな高い所まで見送りに来ていただいて、空ビンの持ち帰りまでお願いしてしまって、ダマチョさん、すみません。でも、ありがとうございました。ではでは、行ってきま~す。
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お土産通りを抜け、この階段を上がると古御嶽神社です。下りて来たのは外国人。富士山には外国の人がたくさん来ていました。 |
【出発】 |
【始めは樹林帯を行く】 |
その先の樹林帯はやがてダケカンバ林になり、途中左手から下山道が合流してきていました。
須走ルートは、登り始めに自然林があるということで楽しみにしていました。やはり緑の森は嬉しい。 |
黒い火山岩の道になると、うす紫色の花が咲いていました。初めて見る花で、家にある高山植物図鑑でも見たことのない花です。
富士山だけに咲くのでしょうか、あちこちの岩陰で咲いています。パンフレットの写真には「ムラサキモメンヅル」と書かれていました。 |
【ムラサキモメンヅル】 |
【オンタデが多い】 |
オンタデは多くて、ずっと上方まで群落がありました。紅色の花はベニイタドリ(メイゲツソウ)というそうですが、中間型のようなのもいてこれも群生しています。 |
途中の道標に小さく2250mとペン書きされていましたが、バスで五合目まで一気に上がってしまったし展望もないので、標高2250mにいるという感覚がない。
各ポイントには、英語・中国語・ハングルでも書かれた道標があって、いかにも「日本の富士山」です。 |
【2250m点 通過】 |
【六合目 長田山荘】 |
六合目の長田山荘に着き、ベンチで休憩。 入口には「有料水洗トイレ」の大きな看板が目立ちます。下の新五合目もそうでしたが、入口には料金徴収専用係のようなスタッフが座っていました。
以前「白い花畑斜面」が問題になった富士山。登山マナーの知らない観光客が多い富士山でのトイレ事情。入山料と思えば安いのかも知れません。
富士登山には、雨具・ヘッデン・防寒着のほかに小銭(200円)も必要です。
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長田山荘を過ぎると、また樹林帯で、こちらのダケカンバは大きく撓んでいます。標高が高くなって積雪も多くなるからでしょうか。
中には何本にも幹分かれしている木もあります。幹が折れて、ヒコバエが伸びたの?面白い造形のダケカンバたちでした。
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【ダケカンバ】 |
向こうに一点、オレンジ色の花が見えて来ました。遠目にはフシグロセンノウに見えましたが、色が微妙に違う。フシグロセンノウは木陰が好きなようで、ちょっと深みのある朱色。クルマユリやコオニユリは太陽燦々が好きな明るいオレンジ色のようです。近くで見ればクルマユリで、斑点のないクルマユリは谷川岳でも幾つか見かけました。その先には斑点のある正統派のクルマユリもいて、斑点のないものは「斑なしクルマユリ」と言うそうです。 |
【瀬戸館】 |
瀬戸館に到着。こじんまりとした小屋です。
ベンチでしばし休憩後、通り抜けると左手に下山していく人達が見え、『あ~ あそこが砂走りか~』と、翌日の下山路は決まってなかったので、この時はただ眺めていただけでした。 |
ゴツゴツ溶岩帯になってもオンタデはずっと続いています。あたりはガスって来て、足元に小さな鳥居と二十六夜塔の石碑がありました。
やがて上にまた小屋が見えて来ました。あれが大陽館のようです。 |
【二十六夜塔】 |
【大陽館 到着】 |
今日の宿の太陽館に到着。 富士山頂は雲がかかって見えませんでしたが、僅かに途切れた瞬間がありました。 明日の天気はどうでしょう・・・ |
受付を済ませると、まずトイレの説明から始まります。一日何度も同じ説明をするのでしょう、立て板に水の如く澱みなく説明してくれて、「紙も流せます。」と聞いてびっくり。「えっ、紙も流していいんですか。」と聞き返してしまいました。観光客ならその説明自体が不思議でしょうが、登山者には紙を流せるということが驚きでした。バイオトイレなので、備え付けの超吸水紙なら大丈夫ということのようです。
トイレ使用料は大陽館も200円ですが、宿泊者は無料。私は当然だと思っていましたが、後日調べると、他の富士山小屋の中には、宿泊者でも毎回100円徴収する小屋もあるらしい。これも普通の山小屋とは違うところでビックリ。色々勉強になります。 |
さて、トイレ説明が終わって部屋の中に入ると、なんと、暗くてよく見えない。以前、富士山の山小屋は雨風が凌げればいい眠れると思うなと聞いていたけど、暗いというのは聞いてなかったので、こんな時間からヘッデンを使うとは思ってもいませんでした。びっくり。そして中央の通路にも布団と寝袋が隙間なく敷き詰められていて、これもびっくり。ここにも人が寝るの?上下2階かと思っていましたが、金森さんが見たところ3階だったようで、寝袋がずらっと並んでいます。一人半畳のスペースだけど、見ればまだガラガラ。
14:20という時刻なので、予約の半分くらいはもう到着しているはず。今日の混み具合はどうなのかなと、受付で「今日の予約は何名くらい入っていますか。」と聞いてみました。ところが、返って来た返事は「答えられません。」と、きつい口調。『・・・? 何か訳ありの小屋なのかな。』とちょっと心配になりました。この小屋は人気がないの?だから予約人数は言えないの?それだから空いているの?でも、お盆で超満員を覚悟していたので、空いているならまあいいかと思いました。が、この後とんでもないことに・・・
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一段落してとにかく外へ出ましょうということで、小屋前のベンチへ行き、明日の天気回復を期待してビールとお茶菓子でおしゃべりタイム。小屋前を通る人の殆どは若いグループや家族連れ、外国人グループ。私達のような登山者姿は殆ど見かけず、まさに観光地の雰囲気です。
小屋に戻ると両側は殆ど埋まっていて、夕食が終わる頃には中央の通路もびっしり。入口に「予約なしでも泊まれます」と看板が出ていたけど、この通路の人たちは予約客ではなくて飛び込み客でしょうか。真夜中でも多くの人が小屋の前を行き来していて、見れば体調の悪そうな人もいる。目一杯詰め込めばお互い好都合ということなのでしょうか、足の踏み場もなくトイレや出入り口への往復も大変でした。
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日付が変わって、14日。 とりあえず2時頃に起きて状況次第で出発しましょうか、ということだったので、一応2時過ぎに外に出ました。ベンチで簡単な朝食を摂りましたが、暗い山頂方面はガスっぽい。風も相当強くて、無理して今出発してもご来光が見れる状況ではない。明るくなってから出発しましょうと、また小屋の中へ引き返しました。 |
【東の空】 |
5時過ぎ、小屋を出ました。相変わらず強い風。 下の山中湖には雲が浮かび、上空も暗い雲に覆われています。日の出の時間なのでしょうか、一ヶ所、明るく輝いていました。上の雲がオレンジ色に染まり、ちょっと妖しげな雰囲気。
風は強いものの、とりあえず出発です。 |
向かい風のなか、時々よろけそうになりながら本七合目の見晴館に到着。(望さんレポによれば、ここのトイレは100円ですがバイオトイレではなく紙持参とのことですので参考までに)
風も一段と強くなり、ガスも迫ってきました。まだ霧雨にはなっていないけれど、上へ行くほど濡れやすくなりそう。『まだ3200m。この標高でこの風じゃあ、山頂は相当ひどいだろうな・・・おまけにガスだし・・・』と、毎度のことながら気力喪失。
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【本七合目 見晴館】 |
【見上げればガス そして強風】 |
昔読んだ新田次郎の小説を思い出し、富士山の天候悪化が普通の山の常識では通用しないことを思い出していました。
平地で風がなくても、富士山には風が発生しやすい。標高が上がれば風も加速度的に更に強くなり、雨でも降ればレインスーツなど何の役にも立たない。
例え登頂したとしても剣ヶ峰まで行くことは難しく即下山ということになるだろう。展望なく、ただ寒く強風に耐えるだけの登頂って意味あるの?怪我や体調不良になったら・・・
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お二人とも今日の悪天の中での登頂に執着していない様子なので、「せっかく行くなら、お鉢巡りも出来るような天気の日に行きたいですね。」と言うと同意して下さって3人の意見が一致。今回は登頂を見送ることになりました。 |
【ガス 撤退】 |
【大陽館から見る山中湖】 |
引き返すと、あっという間に大陽館。 山中湖には相変わらず雲が浮かんでいました。 下界の風はさほどではなさそうですが、目の前の雲は流れるように形を変えて行きます。 |
須走口下山道へ向かいます。 下山中の人たちが一直線によく見えていましたが、この時はまだ人も疎らでした。 |
【須走口下山道】 |
【下山道の 砂走り】 |
砂走りコースの砂は湿っていたのでマシでしたが、乾燥していたらもっと滑りやすく、砂埃で大変だろうなと思われる急坂道です。
時々、文字通り走り抜けるように駆け下りて行く若者がいました。かと思えば、道端に腰掛け、休憩タイムのカップルもいます。 |
正面の山中湖や、昨日登ってきたルートの小屋を左手に見たりしながら下り、やがて砂払五合目に着きました。吉野屋のベンチをお借りして、レインスーツなどザックにしまっている間、ずっと掛け声が聞こえています。
「トイレはこっちだよ~! トイレはこっちだよ~!」というもの。他の山は勿論、観光地でも普通聞かないお店の掛け声。なるほど富士山は「トイレ200円」も大事な営業なんだな~と感心しました。
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【砂払五合目 吉野屋】 |
【笠雲かかる富士山】 |
あとは普通の登山道を新五合目へ下るだけ。
振り返れば、山頂には笠雲が乗っていました。あの中はまだ強風が渦巻いているのでしょう。 |
ダケカンバ帯を下り、古御嶽神社の鳥居を潜って、また須走口新五合目の御土産屋さん通りに戻って来ました。帰りのバスをどうしようかなどと話しながら、ソフトクリームでひと休み。
バス停へ行き、9:20発御殿場行の列に並びました。けっこう並んでいますが、バス会社の人に定員を聞けば、まあ座れそうです。この頃には青空も見えて来ましたが山頂は相変わらず雲に覆われていました。 |
【青空と 笠雲と 富士山】 |
往路と同じバスと電車を乗り継いで、御殿場線の山北駅で途中下車しました。駅舎の反対側に建つ健康福祉センターさくらの湯へ向かいます。改札を出て、右手にある高架陸橋で南側へ下りて、右の建物へ。入浴料は休憩室使用も含めて2時間400円で、靴ロッカー・更衣室ロッカーのそれぞれ100円は使用後に返金されます。早い時間帯だったので土曜日でも空いていて、ゆったり入れました。入浴後は休憩室に集まり、差し入れに頂いたおつまみや持ち込みビールなどで慰労会です。お疲れ様でした。 |
ガスと強風で登頂できなかったのは残念でしたが、富士山がどんな雰囲気かを知ることが出来て、過ぎてみれば楽しい経験でした。夏の富士山は高尾山の高山型といった雰囲気でとても賑やかでしたが、9月になれば少し落ち着くのでしょうか。
------お二人のレポはこちら------
● 望さん :「望の富士山」
● 金森さん :「山の写真集」
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富士山の花々 |