【五竜岳から朝日】 |
朝になりました。天気はどうでしょう。 外に出ると、雲は多いものの上空は青空です。 よかった、よかった、感謝です。
五竜岳のシルエットの上、たなびく雲間から朝日が昇って来ました。
団体さんが朝食をお弁当にして早くに出発して行きました。私は朝食を頂いてから出発です。 |
いよいよ剱岳へ。剱岳は以前から行きたい山でした。が、万一を考え、子供たちが全員社会人になるまで待っていました。そしてまた万万万一を考え、遺言(と言っても、葬式にお坊さんは要らないとか、音楽はどのCDとか、お墓は樹木葬がいいとか)も用意して家を出て来ました。 後顧の憂いなく、いざ出陣。 |
小屋の裏から緩やかな登りで稜線に出ました。振り返ると小屋も随分小さくなっています。
すぐに一服剱に着きました。目の前に聳えるのが前剱。小さく人が見えて、わくわく。 |
【一服剱から見る前剱】 |
この辺りは普通のガレ岩の道で、少しすると勾配のきつい登りになりました。上を見ると大きな岩が見えますが、あの岩の左を抜けるように登って行きます。上には鎖もありますがなくても大丈夫な場所でした。が、ここは落石が多く、以前も直撃を受けて亡くなられた方がいたそうです。自分が落として他の人を怪我させても大変なので、慎重に歩きます。 |
【振り返り見る一服剱】 |
【前剱の大岩】 |
回り込んで急登が終わると稜線に出ました。 振り返ると素晴らしい展望です。 正面に別山と剱御前。右に薬師岳、その奥に黒部五郎岳。笠ヶ岳の頭もチラッと見えています。 雲がたなびいているけど遠望はよく利いて、肉眼でもはっきりと見えて素晴らしい眺めです。 右には大日岳の緩やかな稜線。明日どちらへ行くかは5日の天気次第なので今晩考えよう。
【別山と剱御前 後に立山と薬師岳 右手に大日岳】 |
前剱に着きました。 ここまでは普通の岩場。
目の前に聳える剱岳。ゴツゴツと重量感のある岩峰は神々しさと雄々しさを兼ね備えていて、魅力的。 見つめながら、しばし休憩。あの岩稜のどのへんにカニのタテバイがあるのでしょう。
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【前剱から見る剱岳】 |
【岩峰をトラバース】 |
少し行くと何やら人が多くなって来ました。どうやらこの辺りから渋滞しているようです。
短い鉄製の橋を渡って、岩肌をトラバース。高度感はありますが、足場はしっかりしているし鎖もあるので足元に注意すれば大丈夫、ちょっと楽しい道です。 |
回り込むと、しばらく普通の岩道です。その先、今度は右上に進む所で渋滞していました。
左側に下がっている鎖から登って行くのも面白そうだと思いましたが、あちらは下山ルートらしい。上りと下りでルートが違うのはタテバイ・ヨコバイだけかと思っていましたが、どうやらここも分かれているようです。 |
【平蔵の頭 上りルート】 |
【平蔵の頭を越える】 |
上に出ると今度はこの岩壁を乗り越えるように一直線に下ります。足場はしっかりしているので注意して下りれば大丈夫。ただ、自分が滑ったら下の人も巻き添いになるので、用心用心。 |
ここを過ぎると平蔵のコルで、しばらくは普通の岩場通過でした。前方に人が集まっています。よく見ると、どうやらあそこがカニのタテバイのようで、下で休憩しながら待っている人が見えていました。 あとで写真を見ると左に青いシートが見えますが、帰りはヨコバイと梯子と鎖を通ってこの横に下りて来ます。上りのこの時は、タテバイにばかり目がいっていました。 |
【カニのタテバイが見える】 |
【カニのタテバイ ズーム】 |
振り返れば、下りて来た平蔵の頭が見えます。
大きな衝立のように見える岩の、左端の一直線が上りルートで、ちょうど赤い人が下りてトラバース移動になったところ。
中央の稲妻型に見えている線が下山ルートで、帰りはここを登り向こう側へ越えて進みます。 |
【平蔵の頭を振り返る】 |
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【カニのタテバイ】 |
カニのタテバイは取り付くまでに15分待ち。難所と言われていますが、鎖はしっかりボルトもあって9度の垂直岩というわけではないので、三点支持を守れば難しい所ではありません。 要所要所にはプレートが設置されています。
【プレート整備】 |
この上はカニのヨコバイとの分岐になっているようで、下山して来る人たちもいるので交互に待機。後は緩やかなガレ岩の道を進めば山頂です。 |
剱岳! 山頂に着きました。素晴らしい展望です! 剱沢カールが大きく、立山三山が正面。中央、奥に水晶岳が見えています。 薬師岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳のとんがりも大きくはっきり見えてきました。 左には富士山や南アルプス、燕岳から常念岳あたりも見えています。
【剱岳からの展望】 |
【立山の奥は槍ヶ岳 右は奥穂~西穂高岳、左は前穂高岳のギザギザ】 |
【蓮華岳と針ノ木岳の間の雲海に浮かぶ富士山 左は八ヶ岳 右は南アルプス】 |
ギザギザの岩峰がきれいに並んだ八ツ峰。その向こうには後立山連峰。 白馬岳から不帰ノ剣・唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳。素晴らしい眺めです。
【後立山連峰 白馬岳~不帰ノ嶮~五竜岳~鹿島槍ヶ岳~爺ヶ岳】 |
山頂では新しい祠の設置作業をしていました。ご苦労様です。御神体はまだのようですが素晴らしい展望に本当に感謝。空っぽの祠に手を合わせました。
去り難い思いで、ずいぶんゆっくりしてしまいましたが、そろそろ下山することにします。 |
【剱岳 祠】 |
下り始めてまもなく二つ目の難所、カニのヨコバイです。ここも数人が渋滞していました。鎖がしっかりついているので足元を見て一旦真下に下り、そこから左へヨコバイといわれるトラバースです。平らな足場がしっかりあるので、注意して進めば大丈夫でした。 |
【カニのヨコバイ】 |
【カニのヨコバイ 終わり】 |
【平蔵谷】 |
次の垂直に近い長い梯子を下りて、更に長い鎖を下って行くと小さな避難小屋があって青いシートの横に出ました。上の10番目の写真、「カニのタテバイが見える」に写っていた所です。
その先平蔵のコルは普通の岩ルートで過ぎて行きますが、下の平蔵谷を見るとなんと雪渓を登ってくるグループがあります。雪山に慣れている人達なのでしょう。かなり急峻な雪渓なのに凄いです。
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一枚岩のような平蔵の頭の下に来ました。この岩壁をまた越えます。上の写真の12枚目「平蔵の頭を振り返る」で、中央のカギ型のルートです。
写真で見ると結構な斜度でいかにも怖そうですが、手掛かり足場も多く、鎖もしっかりしているので、三点支持さえ守ればさほど怖くない所です。 |
【平蔵の頭を越える】 |
【平蔵の頭・下りルートを振り返る】 |
裏側に出てから、今度は長い鎖を下りて行きます。振り返ると、朝登ったルートがあってプレートが見えていました。
上の写真の8枚目、「平蔵の頭 上りルート」の箇所で、今は上りルートは誰も歩いていませんでした。 |
ここまで来れば、あとは普通の岩場です。 前方に雷鳥を撮っているらしい二人がいました。が、すぐ横にも雷鳥がいて、「誰を撮ってるの・・・」という顔をしてカメラマンと同じ方向をじっと見ています。何やら微笑ましくて、そっと笑ってしまいました。
すぐ先の前剱で休憩。朝は晴れて展望も良かったけれど、今は雲も広がって剱岳の山頂はうっすら雲に隠れていました。あとは足元の花を見ながら下って行きます。
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【雷鳥】 |
他にミヤマダイコンソウ、アオノツガザクラ、シナノキンバイ、チングルマ、オンタデなど見ながら進み、一服剣で最後の景色を楽しんでから剣山荘まで戻りました。丁度お昼。今日は雷鳥沢まで下りればいいだけなので、剣山荘の食堂でお昼にし、ザックの整理をしたりして別山乗越へ向かいました。山荘の下の池近くにはクロユリが数輪咲いていました。昨日下った道を登って行きます。 |
【クロユリ】 |
【振り返り見る剱岳と剣山荘】 |
【雷鳥坂を下る 中央にキャンプ場】 |
タカネヤハズハハコ、ウサギギク、エゾシオガマなど見ながら剱御前小舎に到着。最後の剱岳を見ながら休憩して、ここからは下りです。
雲が多いながらも日差しのある雷鳥坂を下って行きます。途中、雪渓を通りますが概ね単調な下り。イワイチョウ、チングルマ、イワカガミなど見ながら下って行きました。下にはキャンプ場や山荘がいくつか見えています。 |
沢に出て橋を渡ればキャンプ場で、上の雷鳥沢ヒュッテへ向かいました。
部屋は4階。壁などちょっと傷んだスキーヤーズベッドでしたが布団は一枚一人でゆっくりです。早速地下にある温泉へ向かいました。大きな窓からは残雪模様の山々が見えています。
今夜はここの温泉でゆったり、体調リセット。 明日は五色ヶ原へ向かうか奥大日岳へ向かうか、天気予報次第です。無事に登れた剱岳と素晴らしい展望に感謝して、明日はどうしようと思案しながら眠りに就きました。
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【左上に雷鳥沢ヒュッテ】 |
剱岳は天気に恵まれ、素晴らしい眺望にとても感動しました。途中から渋滞になってツアーのようだったので恐怖感を感じる所は殆どなく楽しいくらいでしたが、流れに乗って山頂に着いてしまった観があり、『あの厳しい剱岳に登った』という感慨はイマイチだったような気がします。しかし前後に人の姿がなかったら、やはり絶壁では不安になりそうな気がするので、却ってよかったのかも知れません。
危ない箇所は整備されているので、高所恐怖症でなく、ルートを誤らず、三点支持を守れば、剱岳の別山尾根ルートはそれほど難しくはないと思います。ただ、ルートを外れると危険なので、ガスで見通しが悪い日などは十分な注意が必要です。 |
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2009年6月 「劒岳・点の記」 |
【劒岳・点の記】 |
「劔岳・点の記」の映画を見てきた。 空撮やCGを使わず、本物を撮りたいという監督のこだわりで、美しくも厳しい大自然がスクリーンいっぱいに映し出され、迫力のある素晴らしい映像だった。測量官達の真摯な姿や苦闘も、表現出来たと思う。最後は、私も心の中で映画の製作者全員に、手旗信号を送りたい気持ちだった。
30数年前、原作を読んだ時、『いつか剱岳に登れる日が来たら、錫杖の頭と剣の先が残されていた辺りや竪穴を見てこよう』と思ったものだ。ずいぶん昔のことだったので竪穴のことはすっかり忘れていたが、本を再読して思い出した。次回また登れる日が来たら、今度は後年設置された三角点も合わせて確認したいと思う。 |
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2009年11月 「劒岳・撮影の記」 |
【劒岳・撮影の記】 |
「劔岳・撮影の記」の映画を見てきた。 ごく一部の映画館(東京は新宿バルト9)でしか上映されないのが惜しいくらい、素晴らしいドキュメント映画だった。 「点の記」の映画を見たとき、測量隊とこの映画の撮影隊が重なった思いだったので、撮影現場が映画として見ることが出来たのは本当に嬉しく楽しみだった。
映画館は全席指定で数も少なく、行った日は満席で見れなかったので、翌日を予約してようやく見れた。やはり好評だったようで、上映期間が延長されたり、別の映画館でも上映が決まった。
後記:2010年3月 DVDレンタル、及び発売開始。
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